どーも管理人のとらいぼです。
オイル(潤滑油)やグリースの構成において、大部分を占めるのが基油(ベースオイル)です。
このページでは、この基油(ベースオイル)について、解説していきます。
基油の種類
まずは、基油の種類について、ご説明します。
基油は、『鉱油』と『合成油』の2種類に分類されます。
鉱油
鉱油とは『原油から精製される油』の事を言います。
原油は、蒸留という方法を使って、ガソリンや軽油、ナフサ等の成分に分類します。
蒸留とは、沸点の違いを利用して、各成分に分類する方法です。

沸点が低いLPGやナフサ等が先に留出され、続いて灯油、軽油、そして最後の方は重油と続きます。
蒸留で留出されずに最後に残った成分(残りかす)を、減圧蒸留という方法を使って、さらに分類していきます。ここで、様々な手法によって、抽出・精製を行います。
そうして出来上がったのが、潤滑油の基油(鉱油)になります。
この抽出・精製工程が、各社の技術の肝であり、この工程でどのような処理をするかで、GroupⅠになるか、GroupⅡになるかが決まってくるのです。(GroupⅠが何なのかは後述する規格で説明します)
では、この抽出・精製工程、どのような処理が行われているのでしょうか。
原油は、元々様々な炭化水素が集まってできている混ぜ物です。
潤滑油の性能に不利な物質も、当然含まれています。
それらの成分を取り除く工程が、この抽出・精製工程なのです。
後述するAPI規格でいうと、GroupⅠ、Ⅱ、Ⅲと数字が大きくなっていくにつれ、精製度が上がっていき、性能としてはPAOなどの合成油に近くなっていきます。

鉱油は、後述する合成油より、非常に安価です。もちろん、その時の原油価格に左右されますが、合成油と比較すると安価であることは間違いないでしょう。
合成油
合成油は、『化学合成して作られた油』の事を言います。
代表格は『PAO(ポリアルファオレフィン)』という物質で、その他にも『エステル』や『エーテル』等の物質が用途によって用いられています。
鉱油と異なり、価格は高い一方で、低温性能や粘度特性、耐熱性などの性能は、良いものが多いです。
基油の規格(API規格)
基油の分類には、よく『API規格』を用いるのが一般的です。

APIとはアメリカ石油協会のことで、1995年に制定された規格です。
余談ですが、石油関連の規格や試験法は、ほぼ全てがアメリカの規格が世界的に使われています。やはり石油の先駆けはアメリカなので、その流れを汲んでいるのでしょう。
石油の歴史については、下記のページでも紹介しています。
この表で、GroupⅠ~GroupⅢが鉱油に該当し、GroupⅣとGroupⅤが合成油に該当します。
硫黄分は原油に含まれている不純物と考えればよいです。
粘度指数は、粘度の温度変化の大きさを表す指標で、数字が大きければ、温度が高くなっても粘度が低下しにくい傾向にあることを表します。
粘度指数や他の潤滑油の性状の詳細は下記ページで紹介しています!
現在は、GroupⅠ鉱油が最もポピュラーです。
企業によってはGroupⅡ鉱油、GroupⅢ鉱油を使い分けて、日々の研究開発を行っているのです。
ガスからつくる魔法の基油?GTL基油とは?
基本的には、潤滑油基油は、『原油からつくる鉱油』と『化学合成で作る合成油』の2種類ですが、企業によっては、『ガスからつくるGTL基油(Gas to Liquid)』というものが存在します。
この基油は、天然ガスを原料にして、つくるものです。主に海外メーカが製造を行っており、日本では製造はされていません。
(昔は、日本でも研究は進められていたようです)
この方法で作られる基油のメリットは、不純物が少ないことです。
そのため、鉱油の部分で説明した、抽出・精製工程が一切不要で低コストで高性能な基油を作ることが可能なのです。
まとめ
このページでは、基油についてご説明しました。
ここで説明した通り、世界的にも最もポピュラーなのが、原油由来のGroupⅠ鉱油です。
今後、脱炭素やSDGs等が注目を浴びる中で、潤滑油がどのような変化を遂げるのか非常に楽しみでもあります。
2022年4月には、ENEOS株式会社から『カーボンニュートラル実現に貢献する潤滑油・グリースの開発について』というプレスリリースが出ております。
原油ではなく、植物を原料とした基油を用いた潤滑油、グリースの開発に成功したという内容です。
この潤滑油がどこまでの性能を持っているかは分かりませんが、確実に脱炭素の方向へ向かっていると思われます。
潤滑油はベースオイルの他にも、性能添加剤も非常に重要な役割を担っています。
添加剤についても詳しく知りたい方は、下記リンク先でも紹介しているので、見ていってください。