どーも管理人のとらいぼです。
潤滑油の話をしているとよく、『〇〇添加剤が~』とか聞くと思います。
けど、『そもそも添加剤ってなんじゃい!』と『添加剤って本当に必要なん?』て思っている方もいらっしゃるはず。
そんな方たちのために、このページでは、代表格である数種類の添加剤について、分かりやすく説明したいと思います!
添加剤① 酸化防止剤
まず1つ目は『酸化防止剤』です。どの潤滑油、グリースにも必ずと言っていいほど、配合されている添加剤です。
油というのは、条件によりますが、酸化します。
酸化しない潤滑油は潤滑油じゃありません。笑
酸化というのは、空気中の酸素と結びつくことを言います。
この酸化が起こると、動粘度が高くなり、『スラッジ』という物質が生成されます。
このスラッジが、機械に悪さをして、故障原因となったりするケースがあります。
なので、この酸化を抑える酸化防止剤は必ず必要なのです。
1つ、簡単な実験をしました。基油と基油+酸化防止剤の2種類の油を用意します。

この油を100℃以上の環境で10時間以上、放置してみました。
すると、酸化防止剤が配合されていない油の方は真っ黒になりましたが、酸化防止剤配合油は、多少黄色くなりましたが、きれいなままです!

この黒い変色は、油が重合してスラッジ化しているのです。このスラッジが、摺動部に入り込んでしまうと、潤滑がうまくできずに、摩耗してしまうのです。
このように、酸化防止剤は非常に重要な役割を果たしているのです。
添加剤② 防錆剤(さび止め剤)
続いては、『防錆剤』です。この防錆剤も、酸化防止剤と並び、潤滑油にとっては、非常に重要な役割を果たします。
金属というのは、空気中の酸素と反応して、錆が発生します。
その錆の発生を抑える役割がこの防錆剤です。
防錆剤は、言ってしまえば、空気と金属が触れ合わなければ良いので、他の油種でも代用は可能です。
ですが、防錆したい期間や機械を置いておく環境によって、錆の発生しやすさは変わってくるので、きちんとした油種選定は必要だと考えています。
添加剤③ 油性剤(摩擦摩耗防止剤)
続いて、油性剤です。油性剤とは、金属と金属の摩擦を低減させる役割を担っています。

上図のように、油性剤は金属表面に吸着して強い膜を作ります。油性剤が無い場合は、金属と金属が直接接触してしまい、摩耗してしまいますが、油性剤が金属表面に吸着することで、金属同士の接触を防ぎ、摩擦や摩耗を低減してくれているのです。
しかしながら、この油性剤は高温や高圧の環境化では、効力が切れてしまうものが多いです。そこをカバーするのが、次に紹介する極圧剤です。
添加剤④ 極圧剤(摩擦摩耗防止剤)
極圧剤は、金属表面に強固な金属皮膜を作って、摩擦や摩耗を防いでくれる役割を担っています。

極圧剤としてよく使用されているのが、硫黄(S)やモリブテン(Mo)、リン(P)です。硫黄系、リン系は金属と結びついて、強固な皮膜をつくり摩擦摩耗を低減する仕組みです。また、Moに関しては、油中で二硫化モリブテンの結晶構造をつくり、その結晶が金属接触を防ぐという仕組みです。
どのタイプも、油性剤より高荷重環境において、優れた摩擦摩耗防止効果を発揮すると言われています。そのため、油性剤でカバーできなかった高温や高圧といった環境でも、効力を発揮できるのです。
しかし、この極圧剤、金属皮膜を形成するのには、ある程度高温になる必要があります。
そのため、上グラフのように、潤滑油を作るのには、常温環境をカバーする油性剤と高温環境をカバーする極圧剤と両方配合する必要があるのです。
添加剤⑤ 粘度指数向上剤
基油のページで、非常に重要な指標である粘度指数について解説しました。
この粘度指数を上げる添加剤が、『粘度指数向上剤』です。(そのまんまですね。笑)
そもそも粘度指数について、よく分からん!という方は下記リンクからどうぞ!
粘度指数というのは、オイルの温度依存性を表す数字なので、数字高いほど、温度によって粘度が変わりにくい、という意味なのです。つまり、高ければ高いほど良い、という事です。

この粘度指数を向上させる効果を持つのが、『粘度指数向上剤』です。
この粘度指数向上剤には、ポリマーと呼ばれるものが用いられることが多いです。
ポリマーを簡単に説明すると、通常の分子が重合して非常に長くなったものの事を言います。
このポリマーは、温度が高くなるにつれ、絡まりがほぐれて、化学的な大きさがどんどん大きくなっていきます。大きくなっていく、という事は油にとっては、抵抗となるので、流動性は低下し、粘度は高くなる方向になります。
温度が高くなると粘度は低くなりますが、一方でポリマーが大きくなり粘度が高くなるので、互いに粘度変化を打ち消し合い、その結果、粘度変化が小さくなる、という仕組みなのです。
ただ、ポリマーは熱に弱いという性質も持つため、たくさん入れればよい、というわけではないので、注意が必要です。
まとめ
添加剤の代表格である、『酸化防止剤』、『防錆剤』、『油性剤』、『極圧剤』、『粘度指数向上剤』について、説明しました。
これらの他にも、様々な種類の添加剤があり、さらに、これらの性能を複数持ち合わせた多機能添加剤というものも存在します。
これらの添加剤を、絶妙なバランスで配合して、様々な機械にマッチした潤滑油の研究開発が日夜行われているのです。